Photo Story
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with 1988 Z31 300ZX | No.6 2005 WINTER |
冬真っ盛りです。 ウン、冬ってイイね。 私は冬が好き。しかも冬の夜ね。何か、街全体の空気が凛と張り詰めている感じがイイ。 そりゃあ、私だって寒さには人並みに弱いけど、ちょっと服を着込んで真夜中のそんな感じの街の中を散歩するのが結構好きなんだ。 というわけで午前1時。家のテレビもつけっぱなしにして、ぶらり散歩に出発です。 |
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いや、さすがに空がスカッときれいだなー。星がたくさん見えるぞ。星座はオリオン座しかわからないけど。 散歩しながら徐々にそんな冬の空気に馴染んでいく建物たちや、決してそれには馴染まないような人間を眺めていくのがおもしろいんだ。 こんな夜中でも、バス停のベンチにだらしなく寝そべった酔っ払いや(凍死しちゃわないか?)、路肩に停めたワゴンから、黒ブチ眼鏡のおにーさんと、ちょっと派手めな女のコとが声を荒げて喧嘩してたり結構、人っているもんだ。 駅前のコンビニの近くを通れば、店先の端っこの方に座り込んで、笑い声を上げている高校生っぽい集団もいる |
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あぁ、私も少し前まではあんなふうにツレと過ごしていた時間があったな…。 遊ぶお金もなくって、何となくみんな集まってきて、誰がくっついた、はなれたとかの、いろいろな話しをだべって…。 そんなことを考えながら、私は少し足早に彼らの前を通り過ぎていく。 |
少し汗ばむほどにズンズン歩くと、この街の景色も少しずつ変わってきてるのがわかってくる。 昔よくいったレンガ作りの小洒落た喫茶店がコインパーキングになってたり、ついこの前まで何もなかったような空き地に、無機質な白いコンクリートのビルができていたりする。 当たり前の事なのだけど、その意思があるないに関わらず、人も街も時とともに変わっていく。 私はどうだろう? 私は私のなりたかった私になっていけてるかな? |
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いや、なっていけてるとは思っているけど、まだまだ先は長いかな? まぁそんなコト考えていたってはじまらない。私は今できることに手を伸ばし続けていくだけだ。 これからもきっとね。 |
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さぁ、次の角の空き地を左にまがったら我が家に到着だ。 そしてその空き地にとまってる古いクルマを眺めて、私の散歩はゴールになる。 そのクルマはもうかれこれ半年は置きっぱなしになっているかなぁ。 名前も知らない、変なタレ目のスポーツカー。 別に壊れているふうには見えないし、何か少し気になってるんだ。 もう長いこと雨ざらしになっているけど、朽ち果てることもなく、それどころか「まだ走りたい」というような意思みたいな雰囲気も感じる。 お前はまた走り出したいのか?なら、その手を伸ばせ。お前の思いを聞き届けてくれる、まだ見ぬ誰かにその意思を伝えることを、決してやめるな。 なんてことを考えながら、私はつけっぱなしのテレビが待つ我が家へとたどり着き、暖かいベッドへとなだれ込んで、泥のような眠りにつくのだ―。 |
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数日後、空き地にあったそのクルマは姿を消していた。 棄てられたのか、どうなったのか…。 私には関係ないコトなのだけど、長い間見ていたので少し気にはなった。 またこの街の景色が一つ変わったなって…。 そしてさらに数日後―。 この冬一番の寒さの日に、空き地にあったあのクルマを仕事場近くの路地で偶然見つけた。 雨じみなんかもすっかり取り払われて、見違える程の綺麗さになっていた。 そして、その運転席には―。 あの年代のクルマには不釣り合いなくらいの若い男のコが乗っていた。 「ボボボボッ…」 少し荒いエンジン音を残して、私の前を通り過ぎていくあのクルマ―。 |
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そうか、お前はまた走り出せたんだ。思いは届いたのか。 よかったな―。 素直にそう思えた。 何だかわからないが、その日少しHAPPYな気分でいられる私がいた―。 さぁ、今日も真夜中の冬の街へ出かけよう。 |
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また、おもしろい何かを見つけるために―。 | |
- fin - |
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MODEL:KAZUNA |
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